インターハイの山頂をキミに[東堂VS荒北VS真波]
第3章 問うことなかれ、それは恋か?
1年走行会以来、東堂は何かと真波を目にかけてやっていた。
真波もそんな東堂に少しだけ尊敬と親しみを感じ始めていた。
部室で荒北がロードバイクの雑誌をペラペラめくる中、東堂は真波に話しかけた。
「時に、真波よ。
お前 好きな女子とかいるのか?」
「えっ」
とっさに真波の脳裏によぎったのは入学式の日の美しい歌声を持つ女だった。
続いていつも勉強を教えてくれようとする、委員長の姿。
「うむ。ロードに乗るものとして、女子人気も大切なのだ。
そのために経験は豊富に積んでおいたほうがいいぞ。
お前はクライマーとしてだけでなく、女子人気の面でもこのオレを脅かす存在に成長するかも知れん。
そういう見込みがある!
まあ いずれの話だがな!
今は恐れるに足らんひよっ子だ!ワッハッハッ」
「一体てめーが誰に人気あるってんだよ、バァカ」
荒北が面倒そうにつっこむのを聞きながら、なんだこの人……と真波も心の中で若干東堂に引いていた。
「えーっと。じゃあ東堂さんは好きな人やつき合ってる人が当然いるんですね?」
固まる東堂。
「オ…オレはあまりに女子人気がありすぎるのでな……
特定のひとりを選ぶとなると他のファンが黙ってはいないことが容易に想像……」
「つまりファンからは選ばないってコトすか?」
「バァカ お前さー、あの日の女のこと実は未だに気になってんじゃねェの?」
荒北がこともなげに言うと
「なっ、何だあの日とは」
東堂は慌て出した。
「ずっと考えてたんだけどよー、あの女にもう一度会うためには今年インハイに出るしかねーよ、たぶん。
そうじゃなけりゃ、もう一生会えない」
真波は
「あの日の女って誰ですかー?」
のほほんと質問したが、東堂はそれを無視して観念したかのように語り出した。
「そうかも知れんね。
だがそれなら問題ねーな。
オレたちは今年の夏、絶対にインハイに出て、そして優勝する!
そうなれば見に来たあのコもオレに好意を抱かざるを得ないだろう。
もっとも、もうとっくに抱いているかも知れないがな!ワッハッハッ」
ったく、どこまでポジティヴだよ。
荒北は心の中でごちたが、賛同した。
「……でも、そーだナ。
今年のインハイで再会できるってのは同意できる。
カンで解んだよ。
もうすぐまた会うことになる。
そんな気がすンだ」
