インターハイの山頂をキミに[東堂VS荒北VS真波]
第14章 オーディエンスをいくら敵に回そうが
東堂から借りた箱根学園の制服を身にまとい、ドキドキしながらは舞台に立った。
ざわめく観客たち。
「ちゃん、今日もかわいーなー」
「あれ、ハコガクの制服じゃね?
ちゃんってハコガクの生徒だったのか?」
「いや、確か、高校は卒業したはずじゃなかったか?」
歌が始まり、ざわついていた男たちは聴き入った。
そんな中、箱根学園で交わした約束通り、歌を聴きに来ていた男は思った。
さん、キミはオレの理想の人だ。
女子に人気なこと自体は大変満足しているが、皆の東堂くんからオレを解放して本当の生きる喜びを与えてくれた。
キミが困っていれば何と引き換えにしても助けたいし、喜びは共に分かち合いたい……
これが成功すればこれからもずっと……む……これは失恋の歌じゃない、告白を後押ししてくれる、希望の歌……!
が最後のワンフレーズを歌い終え、会場が余韻で満たされシーンとなる中、決意を固めた男がひとり。
観客をかき分け、最前列へと、東堂は踊り出た。
「さん、キミが好きだっ!
友人としてとか、異性としてとか、そんなものはもうとっくに超越している!
オレの魂が、キミをどうしようもなく求めているのだっ、キミはいわばオレの心に咲く一輪の花なんだ!」
「オイ、黙って聞いてりゃ、どさくさに紛れて、ちゃんに告ってんじゃねェぞ!」
「そうだそうだフザケンナ、帰れ!
ここは神聖な場なんだよ!」
キレ出す観客たちには目もくれず、東堂は問うた。
「えーーと、さん……伝わった……か?」
は苦笑した。
「どうしていつも自信満々で、告白する時でさえそうなのに、そこだけ恐る恐る訊くのよ、何かデジャブだし……
あのねぇ、分かったよ!
ちゃんと分かった!」
「よかった……」