インターハイの山頂をキミに[東堂VS荒北VS真波]
第12章 見越したぞ、チームメイトでライバルよ
東堂は軽く頷くときっぱり言い切った。
「ああ、彼女の外見だけでもなく、歌声だけでもなく、内面まで含めた全てをな!!
さんは本当はそんなに強い鉄の女などではないよ」
「誰も鉄の女なんて言ってないすよ」
「む。とにかく!
オレはふだん強がっては毒ばかり吐くが、今のは許されるだろうか、こっそり心震わせているさんがかわいくて、いとおしくて、もうどうしようもないのだよ!
彼女を支える存在になって、何も恐れることはないと永遠にささやき、他の誰も知らないところへ連れ去ってしまいたい位、好きで好きで仕方ねーんだよ!」
新開がうなづいた。
「ちゃんって、何も考えずに毒を吐いてるわけじゃなかったのか……
深いな尽八!
オレも何となく彼女のことが解ってきたよ!
で、お前はどうなんだ靖友?
真波の言う通りなのか」
荒北は長いため息をつくと、次の瞬間目を見開いてまくし立てた。
「あのなぁ……忘れる瞬間なんか片時もねェ位、焦がれて、欲しくてたまんねーのに、その激情をおくびにも出せねェ、興味ねェフリを延々と強いられてンのがどれ程キツいか!
本能のままに行動するお前らに解んのか?!
ああ、オレはチャンが好きだヨ。
好きなんて言葉じゃ到底言い表せねェ位に、今この瞬間だって、欲しくて、欲しくて、あの声が聞きたくてたまんねーくれーになァ!!」
東堂が
「よく言った。
それがお前の本心か……」
と、感心したようにつぶやいた。
そこで初めて福富が口を開いた。
「欲しいと言っているが、彼女は物ではない。
意思のある人間だ。
まるでだだっ子だな、荒北」
「福ちゃん……分かってるヨ。
あいつはオレのことなんか毛ほども気にしちゃいねェ。
あいつが手に入るなら、オレはこの脚以外の何を失ったって構わねェっつうのに……
あいつの意思を思うほど、身動きとれなくなンだ。
今のまんま、ダチでいてやるのがあいつにとって一番だと思っちまうとな……」