インターハイの山頂をキミに[東堂VS荒北VS真波]
第11章 ナンパ師から、守れっ
「ーーー迷いや悩みを持つことも怖い 明日はもういらないの 雪に埋めたいのーーー」
「やーっぱさんの歌はいいなぁ……」
ぼーっと半ば放心しながら、ひとりの歌を聴きにきている真波。
「ーーーずっと忘れないよ 例え誰か見付けたとしてもーーー」
でもこれ切ない失恋の歌……なのかなあ。
さんも何だか入学式の日みたいにただ明るく歌うだけじゃなくて、悲しそうに歌い上げてる。
「ーーーキミが残してくれた思い出には何も勝てないーーー」
オレだったらさんに悲しい思いはさせないなっ。
たった一曲歌う間だけでも、さんの悲しいカオを見ると胸が締め付けられるのに、そんな思いさせられるわけない。
狭いライブハウスという鳥かごからふたりで抜け出して、ずっとずっと一緒にいよう……!
「ーーー季節は巡り 身体は凍え 約束の日は遥か遠くーーー」
いつの間にか歌は終わっていたが、のいなくなった舞台を見つめて、真波はじっと立ち尽くしていた。
「ちゃーん、今日こそ一緒にごはん行こうよー」
「行かないよ……この後用事があるんだ」
本当はないが、嘘をつく。
この別バンドのギターの男は、最近何度もを食事に誘っていた。
端正な整ったカオに、なめらかな演奏技術。
今まで女性に拒絶されたことなど、ないのだろう。
「それで、キミの声にオレのギターの夢のコラボの話をしよう!」
「しないよ……私はひとりでいいんだ」
「ちゃんってつれないよね。
でもそんな態度とられればとられるほど、オレ燃えるんだよねー。
絶対、手に入れたいって思っちゃう。
とりあえず、行こーよ!
どこかふたりになれるところにさ……」
の手を取り、歩き出そうとする男。
「アウトです。
ちゃらいおにーさん」
そこに静かに乱入してきたのは、真波だった。
「んだ、てめー高校生?!
どっから舞台裏に、入り込んできたか知らねーが……
子どもが大人の事情にクビ突っ込むもんじゃないぜ。
ほら、帰った、帰った!」