インターハイの山頂をキミに[東堂VS荒北VS真波]
第10章 ハコガク潜入作戦
息絶え絶えに東堂が絞り出した言葉と言えば、
「うむ。
壮絶なまでのかわいらしさだ。
オレの見込んだ通り、とてもよく似合っているぞ!
そうだな……スカートの丈はもう少し長くてもいいんじゃねーか?
今はオレしか見てないからいいが!」
だった。
は思った。
こいつ遠回しに足が太いって言ってるの?
「殴って、いい?」
「なぜだ?いや、歓迎だが」
が、セラから続くこの微妙な怒りをどうしたら発散できるかと思案していたら、東堂が思い出したように言った。
「おお!
そうだ、今日は弁当を作ってきてくれる約束だったな!」
「言っとくけど……レンチンばっか。
10分で作ったものだから。
東堂くんにかけられる私の時間は10分だけってことだよ!
って聞いてんの?」
「こ……これがさんがオレの為だけに作ってくれた弁当……
食べるのがもったいないな!
オレの好物の魚もおかずに入っているではないか!
オレの好みまで熟知してくれていて、見るだけでキミの愛情が伝わってくるかのようだ。
このトマトと玉子焼きを中心とした色合いも素晴らしい。
さらにこの色合いに花を添えているのが……」
「いーから、さっさと食べてくれる?」
ゆっくり、一口、口に運ぶ東堂。
は少しだけ不安げに眉をひそめて、東堂を見守る。
「美味しい……」
正直、味など分かる冷静さはなかったが、
「今まで食べたどんな料理よりも、全身に染み渡っていくようだよ……」
と、東堂は感動していた。
うまい、うまいとパクパク口に運ぶ東堂に、ほっとしたまなざしを送る。
東堂は食べながら考えていた。
しかし、これを10分で作ったなどとはうそだ……ひとつひとつ下味も付けられ、味の調和がとれ、配置もよく考え抜かれている。
「一生懸命……だったのだな……」
ふと、の左手の人差し指の絆創膏が目に止まる。
東堂の脳裏に、早起きして、エプロンを付けて、キッチンで怪我をしてまで、ひとり、自分の為にお弁当を作るが浮かんできて、東堂は思わず泣きそうになった。
「やっぱり……やっぱりスキだっ、さんっ!」
「そんなに美味しいかな?
嬉しい。
10分かけたかいがあったかも」
「違う。弁当じゃない」