インターハイの山頂をキミに[東堂VS荒北VS真波]
第10章 ハコガク潜入作戦
その後も話しまくろうとする東堂との電話を何とか終わらせた後、はぼんやり思った。
あんなに毛嫌いしてたハコガクの制服に袖を通す日が、来るなんてね……
一年前の私からは考えられないことだな……
「あっつーい、わあハコガクって広いな、さすが私立!
このプレハブの陰で待ち合わせって東堂くん言ってたよね。
そろそろ時間になるけど……」
すると、背後から小さな声がした。
「さん……!こっちだ」
「東堂くん……!」
東堂に手招かれるままに辿り着いたのは、校舎から少し離れたL字型の建物だった。
「とりあえず入ってくれ。
今は昼休みだから、基本的には誰も来ないと思う。
すまなかったな。
待たせてしまって。
ファンの女子に制服を何に使うのか、問い詰められて、追いかけられていたのでな。
逃げようにも、ファンの女子を無下に扱うわけにはならんのだよ。
それが天から三物を与えられたこのオレの役目だと……キミと出逢う前は本気でそう思っていたよ、ワッハッハッ」
東堂は笑いながら、部屋に内側からカギをかけた。
「ちょっと、うるさいんだけど。
時間は遅刻したわけじゃないし、別にいいけど」
「すまんね!
気分が上がってしまってね!
隣にさんがいる、というだけでオレは……」
「もう、分かったから!
でも騒いじゃったら、せっかく電気も付けずに、身を潜めてる意味がないよ。
……で、制服は?
持ってきてくれた?」
「ああ。見るがいい。
これが箱根学園女子の制服だ!
どうだ、かわいらしいデザインだろう!
これをさんが着てくれると思うと心踊るな!ワッハッハッ」
「……だから、騒いだら……
まあ、ありがと。
じゃあさっそく着てみるね!
もし入らなかったら、返さなきゃいけないし……」
「?!今?!ここでか?!」
「うん。あっ、後ろ向いてて。
絶対振り返らないでね。
東堂くんに限って、大丈夫だと思うけど」