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インターハイの山頂をキミに[東堂VS荒北VS真波]

第9章 月と星を違えても、枯れない想いがふたつ


にっこり笑って振り返り、のいる公園の入口の方に走って来る彼女は泣いていた。

は焦った。

ちょっ……こっち来ちゃだめだよ……
あー?カオ見られなくてよかった……


すると背後にひとの気配がした。

「盗み聞きとは、相変わらず性悪な子猫チャンだな、チャアン?」

は固まったまま、恐る恐る振り返ると、荒北がばつの悪そうなカオをして立っていた。


は言い訳をはじめた。
「悪かったわ。
でも途中で帰ったら、あなたたちから見えちゃうと思ったの。
ふたりの時間を邪魔しないであげたんだよ」

が我ながらヒドい言い訳だ……あの女のコと比べても、私、性格悪いなーと思っていると、

「別にお前になら聞かれても構わねーよ。
……で?ちったぁ分かったの?
オレの気持ち」

などと言うので、はとりあえず感想を述べた。

「荒北みたいなキチクに恋愛感情があったなんて驚きだわ。
私のことはしょぼいみたいに見下しといて、じゃあそのすきな女のコっていうのはどれだけいい女なわけ?
ってムカつく気持ちが、半分ーーー」

荒北はそれを聞いて脱力した。
こいつ……今ので気付かなかったのか。
今日も本来会えるはずもなかったのに、偶然会えてオレはこんなにも高揚しちまってるっていうのになァ……

「もう半分半分あーゆー一途な女のコのことは優しーく振るんだって少し見直した」
「!」
「まあ、そりゃそうかもねー。
もてない荒北に初めて告白してくれた貴重な女のコだもんねー」
「別に初めてじゃねーよ」
「そうなんだ?
やっぱり荒北にもいいところはあるんだねー」

にっこり笑って言うので、

「オレのことなんざどうでもいいだろ」

と目を反らしながら、荒北が言うと、はさらににこにこ笑った。

「そんなことないよ?
荒北はさ、歌も聴きに来てくれたし、落とし物は約束通り見つかるまで、探してくれるし、海では体調気遣ってくれるし、さっきのコとは違う意見になっちゃうけど、自転車だけじゃないってこと、ちゃんと解ってんだー」

「っセ。
オレは自転車だけだヨ!」
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