インターハイの山頂をキミに[東堂VS荒北VS真波]
第9章 月と星を違えても、枯れない想いがふたつ
外出先で用事を終え、夕方帰宅途中のが、箱根学園のある山のすそのの近くを通りかかり、角を曲がった時だった。
は、箱根学園の制服を着た男を視界に捉えた。
それ自体は特に不思議なことではないのだが、その後ろ姿は見覚えのある細身の短髪だった。
あ……らきた!
はとっさに色々考えた。
私偶然荒北を、発見すること多いなあ。
それにしても制服でどこ行こうってのよ?
あいつは、たぶん寮生よね?
ハコガクだし……
コンパスの長い、前を歩く荒北との距離は、なかなか詰められない。
だが、帰る方向も同じなので、何となく後を追っている様な状態になったは、荒北が途中にある公園に入っていくのを見て、本格的に後をつけている気分になった。
この間はあっちから話しかけてきたし、私も話しかけたほうがいいのかな?
でも誰かと待ち合わせかも知れないし、やめやめ、気付かれない内に早く帰ろ……って待ち合わせてるのは…………女?!
そこには、箱根学園の制服を着た、目のぱっちりとした女がいた。
「あのさー、話があるってンなら、学校でよくねーか?
今は夏休みだが、いやでも毎日カオ合わせてるんだしヨ。
同じクラスじゃねーか」
「……荒北くんは、私と毎日カオ合わせるの……いやなの?
私……私は荒北くんを見るだけで元気がもらえる。
一生懸命がんばってる姿を見るだけで、私も、がんばろうって思えるの」
こ……これは、まさか……
見つかる!と思ったはとっさに滑り台の裏に隠れた。
女は全く気づかず、話を続ける。
「だから、今日は私ちょっとがんばる。
好きです、荒北くん。
彼女いるとか、すきなひとがいるとかってうわさは聞いたことないよ。
私と付き合ってくれませんか」
は今帰ろうとすると確実にふたりに見つかってしまうため、動くに動けず、立ち尽くしたまま、女の告白に衝撃を受けていた。
あの男、そんな素振りは全く見せないくせにもてたのか。
考えてみれば、そりゃそーか。
自転車部のレギュラーだもん、あんな綺麗な女の子らしいコから告白もされるんだ……
は思った。
私とは世界が違うのかも……