インターハイの山頂をキミに[東堂VS荒北VS真波]
第8章 沖までキミを引っ張りたい!
「さぁ、さん、この浮き輪を使ってください。
オレがブイのある沖まで連れてってあげます」
真波が自信ありげに言うと、東堂が反対した。
「それはオレの役目だ!
…………あれ?
さん?どこへ行った?」
海を見やると、とっくに足のつかないところで、は泳いでいた。
「どうしたのー?
みんな早くおいでよー」
が叫んでくるので、セラが遠くにいるに聞こえる様に、叫び返した。
「ちょっと、誰もがそんな沖まで身ひとつで行けるワケじゃないから!」
「…………セラさんこの浮き輪を使ってください」
浮き輪を差し出す真波に、荒北が笑って言った。
「お前、引っ張ってやればァ」
「いいですよ。
セラさん、乗ってください」
と真波が言うと、
「いや、オレが引こう」
新開が浮き輪を受け取った。
の元に辿り着いた真波たちだったが、はひとりでぼんやり泳いでいた。
そんなを見つめながら、
「泳ぎが得意なさんもステキですねー」
真波がほれぼれ……といった様子で言った。
「運動とかなーんも出来なさそうなのにな。
ひとつは取り柄ってあるモンだな」
荒北はあまりを見つめないようにしながら返事すると、真波はすぐさま反論した。
「そんなコトないっすよ!
オレにとってさんは取り柄しかないです!」
「ハイハイ、そーだねェー」
ホントはオレもそう思ってる……と荒北は遠い目をした。
ぼーっとその場で立ち泳ぎをするに、
「さん?
泳ぎは得意なようだが……大丈夫か?
疲れたらこの浮き輪を使うといい」
東堂が優しく話しかけた。
「何でみんなそこまで浮き輪推しなの……?
大丈夫だよーさっきから“花咲水翔”っていう曲がずっと頭の中、流れてて気分いいんだー。
歌い出したいくらい!」
「それは……聞いてみたいが……そうか、大丈夫ならいいんだ。
それはどんな曲なのだね?」
「一番好きな曲かも。
落ち込んだ時とかは聴いてると元気になるよー」
東堂は切なそうな表情を浮かべた。
「落ち込んだ時は、これからはオレに頼って欲しいのだが、そのオレではだめだろうか?」