インターハイの山頂をキミに[東堂VS荒北VS真波]
第6章 荒北カタルシス
にこやかにそう言ってコンビニに入っていくの後姿を眺めながら、荒北は自嘲気味に笑った。
言えねェよな、あのバカ共じゃあるまいし、抱きしめさせて欲しい……とかそーゆーコトは。
荒北はコンビニから出てきたが飲み物を2本持っていたのを少しだけ残念に思いながら、「あンがとネ」と受け取ったペプシを一気に半分近くあおった。
は隣でアイスコーヒーをちまちま飲んでいた。
両手で大事そうに握りしめてこくこく飲み下すその様子がどうしようもなくかわいらしく、荒北は気を紛らすため、またペプシをあおり、すべて飲み切ってしまった。
はなぜか申し訳なさそうに、
「すごくのど乾いてたんだね。
もう一本買ってこようか?」
などと言うので、
「いーヨ。
別にノド乾いてたわけじゃねーし」
普通に断るとがくすくす笑った。
「そんなわけないでしょ!
荒北くんってすっごく優しいんだね!
今日なんて夕方でもだいぶ暑かったし、買い物もしたかったはずなのに、嫌なカオひとつせず、なくしもの、見つかるまで付き合ってくれて……」
荒北があっけにとられていると、さわやかな夜の風が吹き抜けていった。
「自転車部……なんだっけ?
今度はキミの走ってるとこ見たいなっ、じゃーね!」
風と共にもと来た道を歩いていくを見つめながら、荒北は本日何度目かの心臓の高鳴りに胸を押さえていた。
は?優しい?このオレが?
おいおい、面白すぎんだろ、チャン。
だめだ、ほんとにモノにしてぇ。
他のヤツらがどうだとか、キャラじゃねェとか……もう関係ねェ。
オレはオレの欲しいもののために全力で行くぜ…………!