インターハイの山頂をキミに[東堂VS荒北VS真波]
第6章 荒北カタルシス
はものすごく混乱していた。
「ない……ない……っ
全部が入ってる音楽プレーヤーがどっか行っちゃった……
お……落ちついて……家のどこにもないってことは昨日外出先でなくしたのかも知れない。
あれをなくすなんて耐えられない!」
もう夕方になっていたが、はふらふらと家を出て、探しに出掛けた。
昨日通った道をキョロキョロしながら歩いていると、近くのコンビニに入って行こうとするのは、先日会ったばかりの男の姿だった。
とっさ逃げようとしただったが、向こうはとっくに気付いていたらしく、
「偶然だネ、チャン……だっけ?」
などとふつうにあいさつしてきた。
「あ……らきたくん……だよね?ほんとだねー」
荒北はどうでもよさそうにしながら、内心では自分の鼓動が速くなるのを感じていた。
化粧もしてないネ。
あどけないが、オレはこっちのほうがいいかも……
このカオあのふたりはたぶん見たことねーよな……
よく解からない優越感に浸る荒北だったが、の形の良いまゆが泣きそうに下がっていることに気付いた。
「もしかして、なンか困ってる?
オレで力になれることなら、なってやらなくもねーヨ?」
だああ、オレのバカ!
これ以上関わったらホントに抜け出せなくなっちまうぞ!
ただでさえ、もうこんなにこの女に囚われてるのに……
しかもこの女は1年前のインハイの日を全く覚えてないみたいだってのに……
荒北が葛藤していると、
「それが……音楽プレーヤーをなくしちゃって……お気に入りのピンクの!
たぶん昨日外でなくしたと思うんだけど……」
あっさりは悩み事を告げたので、聞いてしまった荒北は腹をくくった。
「は―――そういうコトか。
手あたり次第探したって見つかんねーよ。
道で落としたなら、とっくに届けに出されるか、パクられたかしてるだろ」
「ぱ……ぱく……って……」
「思い出せ。
昨日なくしたって言ってたが、おとといは確かにあったんだな?」
想像しかけた荒北だったが、それは全く表情には出さない。