インターハイの山頂をキミに[東堂VS荒北VS真波]
第5章 純粋でない男の決意は人知れず
今朝より少し真波の本心に近づこうとしたのだろうか、が、頬を膨らませて言った。
「ひとが死んじゃったのににこにこしてないのー!
キミって、いつもにこにこしてるばっかりで何考えてるかさっぱり解らないよねっ」
「教えてあげましょうか。
夢みたいなんです。
あの日出逢えたことも、こうして隣で話ができてることも……
さんはオレにとって生きてる実感をくれるギリギリを超えた存在なんです」
「ギリギリを超えるって何だよ……ひとのことそんな、危ないヤツだと思ってんの?
キミのほうがよっぽどキケンな男だと思うけどね。
生きてる、死んでる、言ってるの聞いてると」
「そうですよね……すみません。
オレ、おかしいですよね。
ロードバイクに乗ってても、山頂の景色を最初に見たいって自分を追い込んでしまって……」
は口に手を当ててクスクス笑った。
「冗談だよ。
いいんじゃないかな、おかしくないよ。
死んでるみたいに生きたくないってのは解る。
私も……だから生きてると思いたくてゲームとかいろいろ手を出しちゃうんだけど、結局歌うことでしか、生きられないんだよね」
真波はそれを聞いて感動していた。
さんあなたはやっぱり俺と同じだ。
オレもロードだけだった……今までは。
あなたにもオレといることで生を実感してほしい……
真波はためらうことなく、の手を取った。
「さん好きです。
あの、キスしていいですか」
「いいわけないけど、でも私今朝までは真波くん実は苦手だったけど、もうきらいじゃないよ」
それは真波にとっては望んでいた最上の答えではなかったが、それでも胸の内が満たされ、幸福感にあふれるのを感じていた。
「ですよね―――でもオレ、今ので本気になりました!
これまでは存在にただただ憧れていたけれど、考え方も、かけてくれる言葉も、ひとつひとつが好きです」
あなたは絶対俺に一番似合う…………
「何言ってるか分からないけど、本気になってよかったね。
自転車か、ゲームかは聞かないけど、頑張って!
応援してるから!」
「はい!」