インターハイの山頂をキミに[東堂VS荒北VS真波]
第5章 純粋でない男の決意は人知れず
もにこにこ笑顔を作って言った。
「本当にごめんね。
私別の用事が……」
「近くの公園でも行きましょう!
今は雨、降ってないし。
持ってきてるんでしょ?ゲーム機」
は真波のカンの鋭さと強引さにあっけにとられながら、このひととは当たり障りなくはやれないかも知れない……もっと感情の深い部分に自然に入り込んでくるひとだ……と思った。
公園のベンチに腰を下ろして、さっそくゲームを起動した真波に
「コンティニューできちゃうからつまらない……か。
じゃあ難易度を一番高くして、後は縛りプレイでもしてみたら?」
とが提案すると、
「なんですか?その卑猥な響きのプレイ」
などとからかうように訊いてくる。
「ばかじゃない?
だから一回死んだら終わり!って決めてやるの。
ほらこーやって……
あっ、死んだ」
一瞬でゲームオーバーし、は悔しそうにしていたが、真波はそれどころではなかった。
こんなに近くにさんがいて、オレのゲーム機持ってプレイしてる……夢みたいだ……シャンプーかな?シトラスのいい匂いもするし、まじでオレも心臓ばくばくしすぎてこのまま死にそう……
真波は心臓の音が聞こえない範囲でめいっぱいに近づいて言った。
「一瞬で終わっちゃいましたね。
オレ、もうこのゲームできないの?」
「そうだよね、ごめん」
そう言ってが真波にゲーム機を返す時、ふたりの指が一瞬触れ合った。
は気付きもしなかったようにケータイを取り出し、
「攻略サイトもうできてるかなー、見てみようかー」
などとのんきに言い出したが、真波はの少し湿った柔らかい指の感触に浸っていて大切なの発する言葉の意味も理解しがたいくらいだった。
「はは、心臓が破れそうに痛いや。
オレ生きてるって感じする……さんといると…………」
「えっ?やっぱりこのゲーム面白いよね。
死んだけど。
グラフィックとかすごいリアルだし」
いやゲームは関係ない、ゲームじゃないんだ……むしろゲーム一瞬で死んじゃうさんもかわいいし、さんの全てがかわいいと思えちまう……重症だな、オレ…………