インターハイの山頂をキミに[東堂VS荒北VS真波]
第5章 純粋でない男の決意は人知れず
じめじめとした梅雨のある朝、はとあるデパートに開店と同時に訪れた。
楽しみにしていた携帯型ゲームの発売日だったのだ。
うきうき列に並んでいると、
「あっ、さんだ」
という声が後ろから聞こえた。
が恐る恐る振り返ると、列に並んでいたのはTシャツにジーンズ姿の真波だった。
「ま……なみくん……だっけ?」
は前回別れた時の気まずさもあり、すぐにでも逃げ出したかったが、長蛇の列に並んでいるため、抜けることはできなかった。
「えーっと、発売日に買いにくるなんてこのシリーズ好きなんだねー」
が当たり障りなく言うと、真波は少し困ったカオをして、
「さんには本音で話したいから言うけど、オレほんとはゲームとかあまり好きじゃないんだ。
これは生を実感するのとの落差を楽しむためのもので……」
などと言い出した。
は真波の言っていることがよく解らなかったが、自分は本音で話す気はなかったので、
「ふーん、確かにゲームは生きてるって感じはあんまりしないよねぇ」
とまた当たり障りのない返事をしておいた。
真波の方はといえば、口調こそいつも通り柔らかだったが、内心では思いがけない偶然にものすごく上がっていた。
やった!またひとつさんの私服姿ゲット!
今日暑くてよかった……薄着に短いスカートから伸びる白い足でオレやばい……今日もさんは訳がわからなくなるくらいかわいーなー。
初めて会った時はろくに話してもくれなかったのに、ふつうに話してくれるようになってほんとによかった……でもオレ、今のままじゃ満足できない!もっとさんのことを知って、永遠にオレだけのものにしたい!
幸い、今回は邪魔も入りそうにないし……
「さんはこのシリーズ好きなんすよね?
オレ早起きしちゃったから買いに来たけど、正直どのへんが面白いのかよく解らなくて……よかったらオレに教えてくれません?」
「えっ?ごめん、私この後用事があって……」
真波は口元だけで笑顔を作った。
「うそつかないでよ。
こんな早くから延々と並ぶひとのこの後の予定っていったらプレイすることしかないでしょ。
だったらオレとやりましょーよ!」