インターハイの山頂をキミに[東堂VS荒北VS真波]
第4章 インターハイ前の肩慣らしにも全力で
どうでもよさそうに謝る荒北に東堂が反発した。
「自分だけかっこつけようとしたってそれはならんね、荒北。
オレはさんのことをお前よりずっと長い時間考えている。
例えるなら深海に閉じ込められた美しい魚がえさを求めてひたすら……」
「だァから、オレはそーゆーのじゃねーつってんたろ!
一緒にすんな!
もううるせーんだよお前!」
「うるさくはな……」
その時、実況の音声が澄んだ空に響き渡った。
「そしてッ、7位、8位でフィニッシュしたのは、天流高校2年、七原選手と、三村選手です!」
がぽつりとつぶやいた。
「私のかわいい後輩だぁ」
東堂がすぐに反応した。
「後輩?!
神奈川でそこそこ強豪だが、オレたちがいるがために万年インハイには出られない……天流高校在学なのか、キミは?!」
「悲しい宿命ってやつだナ」
「偏差値は高めの?!」
は3人のその言葉を聞いて頭に血が昇ってしまった。
「う……うるさいっ!
やっぱりハコガクってろくじゃない!
あなたたちみんな消えてちょうだい!
セラ!行こっ!!」
セラはやれやれといった風に笑った。
「あー悪いタイミングで思い出しちゃったわね……」
肩を怒らせて去っていくを追いかけながら、
「じゃ―――ね、皆さん!
残念だけどウチのお姫さまはきまぐれなのっ。
この分じゃたぶん表彰式も見ずに帰るわね……!」
そんな―――その場にいたハコガクメンバーは思った。
「ちなみに高校は在学じゃなくって出身ね!
今は大学生やってんの、アタシたち!」
そう最後に言い残してセラも去ってしまった。
何の収穫もなかったかのように思えた山岳レースだったが、その晩はベッドの中で見学に行ったことを思い出していた。
「でも……東堂くんも真波くんも一生懸命汗だくになって走ってて……少しだけかっこよかったかもな……
かばってくれた荒北くんはどんな風に走るんだろう……むにゃむにゃ……」