インターハイの山頂をキミに[東堂VS荒北VS真波]
第4章 インターハイ前の肩慣らしにも全力で
つゆにしてはめずらしく晴れた日の朝、と友人のセラは家から少し離れた駅に降り立った。
「言うまでもないけれど……今日のレースは神奈川を中心とした関東圏のヒルクライム大会よ。
起伏に富んだステージが連続するこのレースは“クライマー”っていう登ることを得意とした選手の独壇場になるでしょうね」
「ふむむ なるほど。
ホントだ、痩せた選手がいっぱい見えてきた」
「痩せたっていっても筋肉はちゃんとあるのよ。
それにしてもレース前のこの雰囲気いいよね」
は同意した。
「うん、一生懸命がんばろうとしてる高校生ってかわいー。
一丁前に緊張してるみたいだねっ」
とセラを何となく視界に入れていた内のひとりが
「なあ、あのふたりレベル高くないか?」
隣の選手にささやくと、
「いいとこ見せたいなーがんばろー」
とその選手もつぶやいた。
「ゴール!!優勝は総北高校3年、巻島裕介選手です!!」
「ショオオオ!!」
「僅差で準優勝は箱根学園3年、東堂尽八選手です!!」
実況が高らかにレースの勝者を宣言した。
すると、その場にその場に身を投げ出した巻島に東堂が駆け寄った。
「くあ―――っ巻ちゃん!やられたよ巻ちゃん!
オレはすべてを出し切った。
晴れ渡った絶好の勝負日和に、前日からみなぎっていた脚!
気がかりがなくなって生まれたばかりのようなクリアな視界!
オレが負ける要素は何ひとつなかった。
しかしわが生涯のライバルよ。
お前はこのオレを残り500メートルでわずかに上回り……」
「もう分かったって。
うるさいっショ、お前」
あきれたように返す巻島だった。