第36章 固陋蠢愚
「ここから降りると……ツギハギと距離がある。距離を詰める前にツギハギに気づかれちゃったら、また異形を放たれて同じことを繰り返すよ」
「えー……っと、つまり?」
「そこの窓から校舎に入って、左に曲がった先、中央の窓から飛び降りたらそのままツギハギに攻撃できる」
私の作戦を聞いて、虎杖くんがニッと笑みをこぼす。
「その作戦乗った!」
そう口にして、虎杖くんが目にも止まらぬ速さで校舎の中を駆けていく。
私が示した道順で校内を走り、その勢いのまま指示したポイントで窓ガラスを体当たりで破いた。
虎杖くんが地上に落ちていく。
響く鈍い音は、虎杖くんの攻撃が効いた証。
割れた窓ガラスから、地上を見下ろせば。
虎杖くんの攻撃をきっかけに、七海さんと虎杖くんの連続攻撃がツギハギにヒットしている。
(いける……っ!)
ツギハギが身代わる隙を一切与えていない。
地下水路で、私じゃできなかった七海さんの加勢を、虎杖くんが完璧にこなしてる。
(あともう少し……っ!)
次に虎杖くんの攻撃が決まれば、ツギハギを祓える。
勝利を確信していたその時――。
(――っ)
呪力の気配が濃縮される感覚。
ゾワリと身体中を巡る悪寒。
不穏な空気が私の身体を支配する。
似た感覚を、私は知ってる。
《領域展開……伏魔御廚子》
少年院の事件の時、宿儺が見せた術式。
アレが放たれる寸前の空気と似た空気が、ツギハギから漂ってくる。
(ま、さか……っ)
考えるよりも先に口が動いた。
「2人とも離れて!!」
私の声に2人が反応する。
でも、私の行動は……一歩遅かった。
《領域展開……自閉円頓裹》
その呪文と共に、ツギハギと七海さんが大きな黒球の中に消えた。