第36章 固陋蠢愚
(……帳っ!?)
真っ黒な帳が下りてくる。
(いったい……誰が……?)
瞬間的に浮かんだ疑問。
でもこの帳に漂う呪力を辿れば、答えは容易に見つかった。
「……っ」
漂う呪力は間違いなく、あのツギハギ呪霊のもの。
そして、この校舎の屋上に、最も濃いツギハギの呪力の気配。
本体がそこにいることを、呪いが教えてくれる。
呪霊の居場所が分かった以上、私がやることは一つ。
私の中にはまだ、七海さんに流しきれなかったツギハギの呪力が残ってるから。
(『酩酊』で完全に動きを止めて、捕まえる!)
帳が下りたのだから、遅かれ早かれこの異常事態は七海さんの耳に入るはず。それまで時間を稼げればいい。
足に呪力を流して、私はその場を大きく跳ね上がった。
校舎の屋上に着地したら、少し遠くから予想通りの声が聞こえてくる。
《順平が宿儺の器を引き当てた時点で流れはできてるんだ》
企むようなツギハギの声が、その計画を口にした。
《2人をぶつけて、虎杖悠仁に宿儺優位の〝縛り〟を科す》
(やっぱり……吉野順平を利用して、虎杖くんを……っ!)
私は急いでツギハギの呪力のもとへ駆ける。
この壁を曲がった先、そこにヤツがいる。
(呪いなんかの好きには――)