第36章 固陋蠢愚
ツギハギの呪力が反応するほうへ向かう。
たどり着いた場所には、とある高校が存在していた。
(里桜高校……)
映画館での変死体事件……その被害者と、唯一の生き残りである吉野順平が通っている高校。
その校門前に、私は立ち尽くす。
目を閉じて、感覚を研ぎ澄ませば、この中に、ツギハギの呪力の気配を感じることができた。
でも、敏感になった感覚が教えてくれる呪力の気配は一つじゃない。
(これは……虎杖くんの呪力の気配)
この高校の中に、虎杖くんの呪力の気配も感じる。
宿儺の指の気配である可能性もあるが、これはおそらく純粋に虎杖くん自身の気配だろう。
虎杖くんは今、吉野順平の監視役を任されているのだから、この高校にいてもおかしくはない。
冷静に分析する一方で、額には冷や汗が伝う。
ツギハギの呪霊と虎杖くんが同じ空間に存在している。
その事実を、偶然と考えるのが妥当だ。
けれど偶然にしては、あまりにも出来すぎているようにも思えた。
ツギハギの呪霊と映画館の変死体。
映画館の変死体と里桜高校。
里桜高校と吉野順平。
吉野順平と虎杖くん。
全てを線で繋ぎ合わせれば、自ずとツギハギの呪霊と虎杖くんが線で繋がる。
吉野順平という不特定要素を媒介して、まるで仕組まれていたかのように。
(吉野順平は……やっぱり呪霊側……? それとも利用されただけ……?)
断定するには判断材料が少ない。
けれどもしそうだとすれば、ツギハギの呪霊の目的は、虎杖くん……恐らくその内部に存在している、宿儺の存在。
(どっちにしても、虎杖くんが危ない……っ!)
考えがそこまで行き着いて、私の心臓が早鐘を打つ。
高校の校舎に一歩足を踏み入れた――その瞬間。
この校舎を囲うように、すべてが黒く染まり始めた。