第35章 幼魚と逆罰
「フーッ、残念ですが」
七海さんは、ネクタイをほどいてそれを手に巻きつける。
「ここからは時間外労働です」
すると、七海さんから漂う呪力の気配が一層濃くなった。
それを感知して、ツギハギの表情もパアッと明るくなる。
「面白い!」
「私の術式は対象を線分した時7:3の比率の点を強制的に弱点とするものです。線分するのは全長やウィングスパンだけではありません。頭部・胴・上腕・前腕などの部分までは対象として指定できます」
術式の開示と、時間外労働による呪力の増幅。
七海さんは、今出せる全ての札を切った。
「本気だね」
「そしてこの術式は生物以外にも有効です」
そう口にして、七海さんがその場を駆け抜ける。
「また鬼ごっこ?」
壁をつたい、七海さんがその壁を十劃呪法で線分し、破壊していく。
その破壊されたパーツ全てに七海さんの呪力が注ぎ込まれる。
あのツギハギは七海さんの動きに夢中。
だからきっと気づかない。
「流呪操術……『酩酊』!」