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【呪術廻戦】無下限恋愛

第35章 幼魚と逆罰


「……っ!?」

「ぅ……ぐ……っ」

「綾瀬さん! やめなさい!!」


 ツギハギの体に触れて、その体から呪力を吸収する。

 強力な呪力が恐怖の声となって私の身体を無数の刃で貫いていく。


「……っは、ぁ」


 息をすることすら難しい。

 吐き方を間違えたら、呼吸が止まってしまいそうなくらいに。

 強力な呪いの痛みが私の身体を裂いていく。


 けれど、私が呪力を吸収している以上、ツギハギは呪力を使えない。

 手持ちの『元人間』を繰り出すことも、自らの形を変えることも、七海さんの身体を変えることも、何もできない。


「……っ、そういう術式か! ますます気に入った!」

「綾瀬さん!!」


 ツギハギが呪力を使えない代わりに、体術で応戦しようとする。

 それにいち早く気付いて、七海さんがツギハギの背後にいる私のことを抱きかかえてその場を飛び退いた。


 そうしてそのまま、広い場所へと移動して。

 私のことをその場におろす。


「綾瀬さん、何してるんですか!! 無茶は禁物とアレほど」

「無茶じゃ、ありません」


 七海さんのお小言に被せて、私は私の意見を口にした。


「まだ……死にたくないです。だから…ココから、逃げる、唯一の…方法を考えただけ……です」


 真っ直ぐに七海さんを見つめて、答える。

 七海さんの瞳が揺れたのを、私は見逃さなかった。

 けれど七海さんの返答を聞く前に、その声が頭上から降ってくる。

 
「こんなもんか、一級術師」


 ツギハギが上階の柵に腰掛けて、つまらなそうに口にする。


「よく逃げ回ったけど、色々と限界でしょ」


 私達のことを見下ろして、勝ち誇ったような顔をしている。


「綾瀬さん」


 七海さんが私の名を呼ぶ。

 そうして私にしか聞こえないであろう小さな声で、こう告げた。


「すみません。今回ばかりは……アナタの力が必要です」


 そしてそのまま七海さんは時計で時刻を確認する。

 もう定時は過ぎていた。
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