第35章 幼魚と逆罰
「とはいえ、本来は綾瀬さん……アナタも連れて行きたくないということを理解して私の後ろから絶対に離れないように」
七海さんの手が私の頭に伸びる。
五条先生の手とは違う、けれど私を安心させる温もりが、私の頭を優しく撫でた。
「彼もアナタもまだ、子供ですから」
微かに表情を緩めた七海さんに、私は頷いて返す。
「七海先生ー!」
そんな私たちのもとに、また虎杖くんが戻ってきた。
バーンと扉を豪快に開けて。
「気をつけてね。言い忘れてた。皆実も、頑張れよ!」
お手本のような晴れやかな笑顔に、私も伊地知さんも笑顔にさせられて。
七海さんだけは笑みは溢さないけど、纏う空気は和やかだった。
「虎杖君。私は教職ではないので先生はやめてください」
「じゃあ……ナナミン……」
「ひっぱたきますよ?」
かわいらしい呼び名と、続いた返事に、私は思わず声に出して笑ってしまった。