第35章 幼魚と逆罰
私なりに考えを巡らせていたら、突然家入さんに話しかけられた。
「あ、ウス」
「はい」
『コイツらの死因はザックリ言うと体を改造させられたことによるショック死だ』
家入さんは静かに告げる。
横目に虎杖くんを見たら、その表情が少しだけ曇っていた。
『君達が殺したんじゃない。その辺り履き違えるなよ』
「はい……」
「……ありがとうございます、家入さん」
家入さんの優しい言葉に、私は苦笑する。
家入さんが気遣ってくれる前から、私は当然のように『自分のせいじゃない』って割り切ってしまっていた。
どんなに成長しようとも、私はよく知らない他人の死に、感情を動かせない欠陥人間だから。
(ここが……虎杖くんとの差か)
家入さんの言葉を受けても、虎杖くんはその死に責任を感じていた。
通話を終えて、虎杖くんは静かに呟く。
「どっちもさ、俺にとっては同じ重さの他人の死だ。それでもこれは……趣味が悪すぎだろ」
纏う空気は怒りに満ちていた。
他人のために、本気で怒れる虎杖くんを見ていたら、自分の汚さが浮き彫りになる気がして。
俯いた私の肩に、優しい温もりが触れる。
醜い私の感情を知ってか知らずか、七海さんが私の肩を優しく叩いてくれた。
「……七海さん」
「あの残穢自体ブラフで、私達は誘い込まれたのでしょう。相当なヤリ手です。これはそこそこでは済みそうにない。気張っていきましょう」
「応!!」
そこそこで済むならそこそこで、と言っていた七海さんが、先刻の虎杖くんと同じ言葉を口にする。
その意気込みに応えるように、虎杖くんもかけ声をあげた。
「綾瀬さんも、いいですね?」
七海さんが私を見下ろす。
その視線はやっぱり優しくて。
「……っ、『応』です!」
私も虎杖くんに倣うように、かけ声をあげた。