第35章 幼魚と逆罰
「私の術式はどんな相手にも強制的に弱点を作り出すことができます」
馬型の異形を前にして、七海さんは自分の術式を説明する。
「7:3。対象の長さを線分した時、この比率の『点』に攻撃を当てることができればクリティカルヒット。私より格上の者にもそれなりのダメージを与えることができますし。呪力の弱い者であればこのナマクラでも両断できます」
そう、七海さんが操るのは布でぐるぐる巻きにされたナマクラ。私の小刀同様、通常であれば攻撃力の低い武器だ。
「聞いていますか、虎杖君」
「あっ!! 俺に言ってたの!?」
呪霊の動きに集中していた虎杖くんは、驚いたように返す。
「そういうのってバラしていいもんなの?」
「バレても問題のない術式、問題のない相手、またはバラすことでミスリードを誘うのであればいいでしょう」
おそらく、これからの戦いに必要なことを教えてくれているんだと思うのだけど。
私も虎杖くんも、異形の動きが気になって。
七海さんの言葉にも集中しきれない。
でも……。
「メリットはあります。『手の内を曝す』という『縛り』が術式効果を底上げするのです。……こんな風に」
《お゛っ》
パーツをそれぞれ等分して7:3で両断し、七海さんが馬型の異形の動きを完全に止めてしまう。
七海さんの手捌きに、私と虎杖くんは簡単に目を奪われた。
「私からは以上です」
七海さんとの実践訓練はこれが初めて。
稽古をつけてもらってる時点で、その強さは大体わかっていたつもりだけど。
(やっぱり七海さん……すごいっ)
《せんざい》
《おむかえ〜おがえり〜》
そんな私と虎杖くんの間に2匹の異形が飛んでくる。
(ヤバっ)
足に呪力を流して、その場を飛び退く。
同時、虎杖くんも異形の襲撃を避けた。