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【呪術廻戦】無下限恋愛

第35章 幼魚と逆罰


(呪霊……にしては、呪力が変)


 異形からはたしかに呪力を感じるけれど、いつもの呪霊とはその流れが違っていた。

 通常の呪霊は、呪力が呪霊の内側から放出される形でその流れを感じるけど、この異形は……呪力に包まれているイメージ。


(……気のせいかな)


 考える私の隣で虎杖くんが臨戦態勢に入る。

 けれど虎杖くんの動きを七海さんが制した。


「ストップ。コチラは私が片付けます」

「虎杖君と綾瀬さんはそちらの呪霊を」

《いいい゛〜い、せんざい》

《お゛むかえ〜まだ〜〜》


 全体的に丸っとした、口元が90°歪んでいる異形と、長方形のドアのような肢体に手足がくっついた異形がすぐそばで私たちの様子をうかがっている。


「皆実は下がってろ」

「ううん、私も戦うよ」


 虎杖くんの背後で、私は腰のベルトに提げていた小刀を手にした。


「虎杖くんと会わなかった間、私だって何もしなかったわけじゃないから」


 私がまっすぐ虎杖くんの目を見て答えたら、虎杖くんが「悪ぃ」と苦笑した。


「じゃあ四角いヤツは皆実に任す!」

「うん」

「勝てないと判断したら呼んでください」


 相手を決めた私と虎杖くんに、七海さんが忠告する。

 戦意を削がれたのか、虎杖くんがカクッと体のバランスを崩した。


「ちょっとナメすぎじゃない? 俺達のこと」

「ナメるナメないの話ではありません。私は大人で君達は子供。私には君達を自分より優先する義務があります」

「ガキ扱いならナメられた方が良かったよ」

「君達はいくつか死線を越えてきた。でもそれで大人になったわけじゃない」


 七海さんはスーツのジャケットのボタンをするりと外す。


「枕元の抜け毛が増えていたり、お気に入りの惣菜パンがコンビニから姿を消したり、そういう小さな絶望の積み重ねが人を大人にするのです」


 そして、背中からそのナマクラを取り出して、構えた。
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