第35章 幼魚と逆罰
五条先生の後ろ姿を見つめていたら、七海さんの大きなため息が降ってくる。
その横から現れた虎杖くんも私の首元をマジマジと見て「うわぁ…」と呟いた。
「痛そー……っつーか、五条先生、皆実の綺麗な身体によくこんなのつけれるよな」
あんまりにも凝視されると恥ずかしくて、私は五条先生に噛まれた首筋を手で押さえた。
「あ、はは……それより虎杖くんっ、久しぶり」
「おう、久しぶり! またよろしくな!」
ニッと笑ってくれる虎杖くんに、私も笑顔を返す。
(うん……大丈夫)
今目の前にいるのは虎杖くん。
だから私の心も落ち着いてる。
ちゃんと虎杖くんと宿儺の存在を切り離して考えることができてる自分に安心した。
「再会の挨拶中申し訳ありませんが、もう行きますよ」
私と虎杖くんの間に入って、七海さんが告げる。
そしてそのまま七海さんが私に視線を向けて。
「その首はあまり露出させないほうがいいでしょう。伊地知君に応急処置セットを持ってくるよう伝えたのでガーゼでも貼っておいてください」
「……何から何まですみません」
そうしてまた、私は虎杖くんと会わなかった間の話をして。
七海さんも途中でその話に参加して。
ほんわかした空気が流れていた。
だから、私たちは。
これから始まる事件に感情ごと翻弄されてしまうことなど、考えてもいなかった。