第35章 幼魚と逆罰
七海さんの視線は決して冷たいものじゃない。
突き放そうとしてそんなことを言ってるわけじゃない。
それが、分かるから……。
「はい。だから、いっぱい頑張ります」
私の言葉を聞いて、七海さんは微かに表情を和らげる。
そして虎杖くんのほうに向き直った。
「宿儺という爆弾を抱えていても己は有用であると、そう示すことに尽力してください」
リスクを超えるくらいに強くなれ、と。
七海さんの言葉を受けて、虎杖くんは静かに答えた。
「……俺が弱くて使えないことなんて、ここ最近嫌という程思い知らされてる。でも俺は強くなるよ。強くなきゃ死に方さえ選べねぇからな」
真面目に告げて、今度はいつもの虎杖くんらしい所作で。
「言われなくても認めさせてやっからさ。もうちょい待っててよ」
「いえ、私でなく上に行ってください。私はぶっちゃけどうでもいい」
「あ、ハイ」
そんなやり取りに私の頬が緩んだ。