第35章 幼魚と逆罰
「正解。久しぶり、皆実。1週間ちょっとぶり?」
「はい、お久しぶりです」
「あっ、皆実だ! 久しぶりっ!」
五条先生の背後から、虎杖くんがニョキッと顔を出す。
久しぶりに見る友人の姿に、思わず頬が緩んだ。
「久しぶり、虎杖く…ぅ、ふ…ぐっ」
「だーめ。まだ僕が皆実を充電中だから悠仁にカワイイ顔見せるの禁止」
虎杖くんに挨拶しようと身体を捩ったら、今度はそのまま真正面から抱きしめられてしまった。
「うわっ、先生ずりぃ! 俺も皆実と再会のハグしてぇよ!」
「ダメに決まってんでしょ。代わりに悠仁がハグしていいヤツを紹介するよ」
そう言って五条先生が私のことを左腕に抱きしめたまま、その手で七海さんの方を指し示す。右腕は七海さんの肩に回して。
「脱サラ呪術師の七海君でーす」
「その言い方やめてください」
初対面の虎杖くんに、七海さんを紹介し始めた。
「呪術師って変な奴多いけどらコイツは会社勤めてただけあってしっかりしてんだよね」
「他の方もアナタには言われたくないでしょうね。というか、そろそろ綾瀬さんを離してあげたらどうですか」
「離すわけないだろ。今僕と皆実は互いに互いで充電ちゅ」
「アナタと話すと頭痛が激しくなりますね」
七海さんが呆れて頭を振る。
私のことを気遣ってくれてる七海さんに、すごく申し訳ないのだけど。
でも実は、私を抱きしめる五条先生の腕の力は弱くて。
抜け出そうと思えば私の力で抜け出せないこともなかった。
(だけど……)
久しぶりの五条先生をあともう少しだけ感じていたいって、思ってしまって。
私はあえてその腕を振り払わずにいた。
そんな私の様子に気づいて、七海さんがため息を重ねた。
そしてそんな私たちの様子を見慣れている虎杖くんは、私たちのことを完全スルーで七海さんに興味を示していた。