第35章 幼魚と逆罰
七海さんに連れられ、私は神奈川県川崎市にやって来ていた。
「待ち合わせ場所って……本当にここですか?」
「ええ」
七海さんの後ろをついていきながら、私はその背中に問いかける。
私たちは今、鍾乳洞のような造りの中を歩いていた。
一言話せば周囲の岩壁に自分の声が反射して響き渡る。
洞窟のような周壁の中にしっりと木造建築が施されている、なんとも不思議で不気味な場所だ。
「ところで、任務って……?」
そういえば、任務の内容を知らないままだったことを思い出して、私は七海さんに質問を重ねた。すると七海さんも「まだ言ってませんでしたね」と咳払いを挟む。
「神奈川県川崎市の映画館で、上映終了後に男子高校生3名の変死体があがったらしく、その調査と、可能であれば事態の収拾を、とのことです」
「変死体、ですか」
「ええ。私も現場を見てないので詳しくは分かりませんが、人為的範囲を超えて遺体の頭部が変形していたようです」
「呪いが関与してる可能性が高い、と」
「その通……」
「そのとぉーり」
七海さんの返事に重なるようにしてその声が耳元で響く。同時に、背後からノシッと重しが乗っかった。
私と話していた七海さんは額を押さえ、やれやれと首を横に振っている。
「五条先生?」
私の背後、抱きつくようにして五条先生がいる。
顔だけ振り返れば、黒布の目隠しをした五条先生が視界に映り込んだ。