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【呪術廻戦】無下限恋愛

第34章 心の師


「どうしました? 綾瀬さん」

「……七海さんでも冗談言うんですね」


 いまだ驚きを隠せずに、私は七海さんの隣に腰掛ける。

 裏返った声で話す私に、七海さんは肩をすくめた。


「アナタに近づきたいと顔に書いてありましたからね。余計なことをしましたか?」

「い、いえ……助かりました、けど……無理ありません?」

「そうでもないでしょう。綾瀬さんも一応結婚可能な年齢ですし。とにもかくにも、これくらい言っておけば問題ないでしょう」

(ないのかな? ……まあ、いっか)


 長引きそうだった知らない人との会話を切り上げることができたし、私としては結果オーライだ。

 七海さんもそれ以上この話を長引かせるつもりはないみたいで。


「ああ、でも今の発言……五条さんには内緒にしてくださいね」


 付け加えられた言葉に苦笑しつつ、私は七海さんが買ってくれたカフェオレに手を伸ばした。

 私が一口飲むのと同時、七海さんもコーヒーを口にして、満足げに息を吐く。

 ここのカフェは七海さんの行きつけであり、お気に入りの場所。

 カフェオレも絶品で、疲れた後に飲むと、程よい甘さが身体中に広がって元気が湧いてくる。


「はあー……これで家帰ってからも筋トレがんばれます」

「アナタがこれほど頑張り屋だったとは、意外でした」


 七海さんがコーヒーを飲みながら、私のことをメガネ越しに横目で見つめた。


「七海さんの教え方があってるんだと思います。成長してる感覚があると、がんばりたいと思えますから」

「そうですか」

「もっと筋トレして、稽古して……それで七海さんみたいに強くなりたいです」

「あの人の前で、ソレも言わないようにしてくださいね」


 七海さんがため息まじりに答えた。

 五条先生の前で言うつもりはないけど、規格外の五条先生よりも七海さんは目標にしやすい存在。強くて遠い存在だけど、でも身近な存在で。


「私レベルになら、そのうちなれますよ」

「……一級呪霊なんて、絶対倒せないですよ」


 今の私じゃ絶対無理。蠅頭がやっと倒せるかなってくらいなのに一級呪霊を倒すなんて夢のような話。

 でも七海さんは私の話を真剣に考えてくれた。
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