第34章 心の師
※皆実視点
七海さんと過ごして早いものでもう一週間。
日にちが経つのを遅く感じるどころか、もうそんなに経つのかと驚くくらい、毎日が充実していた。
「綾瀬さん、足に呪力を」
「はい!」
「そしてそのまま跳躍」
「はい!」
今は身体の局所に呪力を溜めて、通常の倍以上の身体能力を発揮する訓練中。
七海さんに教えられた通りの方法で、足に呪力を流して飛んでみれば、私の身体がふわりと浮かんだ。
「わっ…あいたっ!!!」
「飛びすぎです」
天井にぶつかって、畳に落ちる。
恒例行事のように畳と一体化した私を、七海さんが肩をすくめて見下ろす。
手を差し伸べられるのはこれで何回目になるだろう。
「でもだいぶ呪力操作が身に付いてきましたね」
「まだ……微妙にコントロールはできないですけど」
「そうでしょう。アナタの呪力量は乙骨君のソレに匹敵……吸収次第で凌駕しますからね。簡単には制御できませんよ。それがしっかり制御できれば特級レベルです」
私には程遠い等級を口にして、七海さんが私の腕を引っ張った。
「ところで、今日の筋トレは」
「しました。ちょっと余裕が出てきたのでそれぞれ15回ずつ増やしました」
「よろしい」
七海さんの言いつけをしっかり守って毎日筋トレに励んでいる。
暇があれば、一日の回数を朝昼晩の3回…つまり3倍でやったりもした。
オーバーワークは禁物と言われたので、あくまで無茶にならない範囲で。
私が答えると、七海さんが「そろそろですかね」と呟いて、道場の隅に置いていた袋を取ってきた。
袋の中からは質のいい赤布に丁寧に包まれた……ソレが現れた。