• テキストサイズ

【呪術廻戦】無下限恋愛

第34章 心の師


「早く注いでください」

「……あ、グラスにビールを注げばいいですか?」

「違います。水を注いでください」


 七海さんがため息を吐いて、言葉を付け加えた。


「未成年者がいるのに飲みませんよ」

「そんなこと言ったら、私がいる間ずっと飲めないですよ」

「……フー」


 私の言葉に、七海さんは葛藤するように上を向く。

 深いため息がなんだか面白くて、笑いそうになるのを堪えた。


「じゃあこれも必要最低条件に加えませんか?」


 私はそう提案して、冷蔵庫の中から七海さんのビールと、アップルジュースを取り出した。


「私がいても七海さんは七海さんの飲みたいものを飲む。私も七海さんがお酒を飲む時はジュースを飲みます。これでどうでしょう」


 冷蔵庫の中で唯一異質なアップルジュース。

 封の開いていないソレは、おそらく七海さんが、居候する私のために予め用意してくれたもの。

 何も言わないけど、きっとそうなんだろうなって分かるから。

 そんな提案をして、尋ねるように首を傾げてみたら、七海さんは降参するように額を抑えた。


「お言葉に甘えます。……ですが、今日の食事に合うのはビールよりワインでしょうね」


 七海さんはそう言うと、キッチンの奥に置いている棚を開けた。

 よく見ると、ワインボトルがいくつも仕舞われている……所謂ワインセラーというものが置いてあった。


「初日ということで、せっかくですから良いワインを開けましょうか」

「飲むのは七海さんだけですけどね」

「気持ちの問題でしょう」


 七海さんとそんな軽い言葉を交わす。

 少しだけ七海さんとの距離を縮められた気がした。


 その後食べたペペロンチーノは、なんとも言い表しがたいくらいの美味だった。
/ 612ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp