第34章 心の師
私の全部を否定するんじゃなくて、その中からほんのわずかでもできていることを見つけて七海さんは褒めてくれた。
「前に伏黒くん……同期に、重心のかけ方を指摘されて練習したんです」
「ナルホド。正しく教えられた上で練習すればできるということですね」
「いや…そういうわけでは」
「別にハードルをあげているわけではありません。私はぶっちゃけ、できてくれれば何でもいい」
七海さんはそう言って、また組み手の構えを取る。
七海さんの教え方は、少しそっけないけど、でも分かりやすくて。
「綾瀬さん、避け方が甘いですよ。もう少し身体を逸らして」
「はいっ、すみません!」
今まで稽古といえば、投げられるだけで、多少の成長しか感じられないものだったけど。
「七海さん、もう1回お願いします!」
七海さんとの稽古は、弱虫な私ですら、本当に強くなれる気がした。