第34章 心の師
「まあいいでしょう。では、部屋を案内するのでついてきてください。一人暮らし用の部屋なのであまり広くはありませんが」
七海さんがそう言って席を立ち上がる。私もそれについていくようにして席を立った。
まずは毎日使うトイレと浴室、必要な備品の在り処を教えてくれる。そしてその途中で寝室を教えられ、キッチンに戻った。
「冷蔵庫のものは好きに使ってかまいません。ちなみに綾瀬さんは普段から料理をされますか?」
「……五条先生の家ではいつも作らされてましたけど、上手ではないです。いつも五条先生に酷評されてました」
私が答えると、七海さんはまたため息を吐いた。
「あの人はいつまで経っても、精神年齢が実年齢と体格についてこないようですね。……では、時間が合う時には私が綾瀬さんの食事も用意します。その代わり綾瀬さんは部屋の掃除を。お願いできますか?」
「そ、そんな……居候させてもらうのにご飯まで用意してもらうなんて」
「私の分を作るついでです。何事も『適材適所』と言うでしょう。得意なことを得意な人がするのが効率的です。アナタが作りたいのであれば話は別ですが」
五条先生とは正反対の考えを披露して、七海さんは私に向き直る。