第34章 心の師
「ったく、皆実も皆実だよね。僕としばらく会えなくなるんだからもうちょっと寂しそうにしょんぼりしろよ」
「してますよ、コレでも」
「いーや、北海道にいるときは『五条先生、離さないで♡』って僕にしがみついてチョーかわいかった」
「大きな声でやめてもらえません?」
「でも事実じゃん?」
事実だから言い返せない。でも今ここで言うような話でもないじゃん。
真面目な時には嫌になるくらい空気読んでくれるのに。
わざと空気読まないようにしてるんだって分かるから、余計に恥ずかしくなる。
「皆実、顔真っ赤だよ? 何、昨日あんなにシたのにまだシたくなっちゃった?」
「違……っ」
否定しようとした私の顔は、もうすでに五条先生の手にホールドされていて。
「今から七海と会うのにそんなエッチな顔しちゃダメだよ」
そんなこと言うなら、今すぐこの状況を解いて冷静にさせてほしいのに。
五条先生の顔がどんどん私に近づいてきて。
「すみません、別件の電話があって出るのが遅く……」
ガチャリ、と開いた扉の向こう。
スーツ姿で特徴的な眼鏡をした、金髪の男性が扉を開けて固まっていた。