第34章 心の師
北海道旅行から戻って翌日。
五条先生と一緒に、私はとあるマンションの一室の前に佇んでいた。
(立地のいいマンションだなー)
辺りを見渡す私の隣で、五条先生がインターホンを鳴らす。
ピーンポーンと軽やかな音色が響き、私は家主の登場を待って肩を強張らせていた……んだけど。
ピーンポーンピンポンピンポンピピピピンポーン
(……嘘でしょ)
五条先生がインターホンを連打し始め、私は思わずその指を掴んだ。
「ちょっと皆実、指退けて。押せないじゃん」
「これ以上押さなくていいです! そんなに鳴らさなくても聞こえてますって」
初めから印象悪くしてどうするつもりなんだろう、この人。
五条先生はやれやれ顔で私を見下ろしてるけど、果てしなくコッチの方がやれやれだよ。
「イヤ、どう考えても聞こえてないっしょ。だってこの僕がピンポン押してもう10秒は軽く経過してるのにまだ扉開かないっておかしくない? 普通走って玄関に来るでしょ。イケメン最強呪術師五条先生がわざわざやってきてんだからさ」
(……謙遜とは)
「皆実」
「……何も言ってないはずなんですけど」
私が眉を下げると、五条先生は私と視線を合わせるように腰をかがめてきた。