第32章 反魂人形③
日が落ちていく時間帯。
TDLのときもそうだった。
夕暮れ時はどうしても、楽しい時間の終わりを知らせるみたいで寂しくなる。
(五条先生との旅行も……もう終わり)
そんなことをしみじみ考えてしまって、五条先生のことを見上げるけど。
隣にいる五条先生は終わりなんて全く考えてないみたいに鼻歌なんて歌ってた。
「ロープウェイってテンション上がるよねー。箱ごと揺らしたくなる」
私は五条先生に連れられるまま、ロープウェイに乗ってる。
高台に向かう小さな箱の中、五条先生は「揺らしたくて仕方ない」とウズウズしてる。
「絶対にやめてくださいね。壊れて落ちたら死にますから」
「そうなんだよねー。僕は落ちないけど皆実は落ちちゃうもんね」
「落ちるのが普通なんですよ」
そもそも乗ってるのは私だけじゃない。
一般人もいる中で空中を移動してる小さな箱を、こんなデカい大人が揺らしたら、おそらく通報される。
もし壊れて落ちたらそれこそ殺人鬼でしかない。
「ちぇー……あ。ほら、皆実。さっき僕たちがボート漕いでた池、アレだよ。もうあんなに小さい」
五条先生が指差す方を窓から覗くと、綺麗な水面が遥か下方に見える。
ボートを漕いでた時は広い池に見えたのに、上空から見下ろせば、私の掌に収まってしまいそうなくらいに小さい。