第32章 反魂人形③
五条先生が用意してくれた服に着替えて、私は五条先生と一緒に札幌観光を満喫する。
昨日は急だったから、TDLの時に五条先生がくれた服を着て札幌にやってきた。結局旅館にいるだけだったから、それを誰かにお披露目するってことにはならなかったけど。
今日の服装は、五条先生が五条家の人に急遽用意してもらったもの。朝一で旅館に届けてもらったらしい。
(本当にすごいなぁ……五条家)
そんなことを思いながら、自分の服に視線を落とす。
白の襟付き花柄ワンピース。七分丈だけど生地がしっかりしていて、薄着感はないから、TDLの時の服よりも安心感がある。
女の子らしさが溢れる衣装で、似合うか不安だったけど。
『マジで似合ってる。僕の待受決定』
と言って、五条先生がスマホで私の写真を撮っていた。
さっきチラッと見えたスマホの画面は本当に、今日の私の姿になっていた。
(……五条先生って、実際どういう服が好きなんだろ)
制服とTDLの服と、今日の服――五条先生が選んでくれた服の趣向がそれぞれ違いすぎて、五条先生の好みが全然分からない。
そんなことを考えながら、私は目の前のサングラスをかけた五条先生を見つめた。
「皆実は何食べるー?」
私の視線に気づいて、五条先生が私にメニューを見せながら問いかけてくる。
五条先生の案内でやってきたのは、札幌で有名なケーキ屋さん。イートインができるということで店内の広い席に案内されたのだけど。
「……五条先生、まだ食べれるんですか?」
私が尋ねると、五条先生は質問の意味が分からないと言いたげな顔で首を傾げてる。
今来ているケーキ屋さんは、本日5件目のスイーツ店だ。
各お店でこれでもかというくらいに人気のスイーツを食べ尽くしているはずなのだが。
「うん、余裕。何? 皆実、もう食べれない?」
「……飲み物でいいかな、と」
それぞれのお店でケーキやアイスを食べてるから結構お腹にキている。もともと少食な方だから、正直今日はもう何も食べなくてもいいくらいだ。
私の返事を聞いた五条先生は「えーーーーーー……」と不満しかない声を上げる。