第27章 情③
「五条先生といっぱいキスしたいですよ。……たくさん、抱きしめてほしいですよ」
全部、本当の気持ちなの。
でもこの気持ちが大きくなればなるほど、私は五条先生を欲しがって。
「そうやって、私は……五条先生を呪ってるんですよ」
知らずに、何度も。
私は五条先生の気持ちを、呪いで弄んだんだよ。
「……そんなこと、あるわけないだろ。皆実が僕を呪えるわけ――」
ないって、言ってよ。
この唇が触れた後も、そんなふうに強気に答えてよ。
「……っ」
大好きな唇に、私の穢れた唇を重ねたら。
私が望まなくても、私の呪いは全部、五条先生に流れてくんだよ。
(ほら……やっぱり)
私のキスで、五条先生の体は簡単に熱を帯びるの。
私に触れる手の温もりが。
私に覆い被さる身体が。
呪われた熱で、いっぱいになってる。
「……皆実」
五条先生の感情を置き去りにして、私の呪いが五条先生をその気にさせてるの。
「全部……私の、呪いのせいなんです」
言いたくなかった。
認めたくなかったよ。
この熱が呪いで生まれた感情だって。
口にしたら、涙が止まらなくなることくらい、分かってたんだよ。
「ふざけんなよ……」
溢れた涙が、大好きな香りで溢れたベッドを、濡らしていく。
「これが……呪いなわけ、ないだろ」
そう、信じてた。
五条先生の気持ちを、信じていたかった。
でも……。
「私はもう……それを信じられないんですよ」
この関係が、呪いの介在しない確かなものだって。
もう私の心は、そんな綺麗な真実を、受け止めることができないの。
「それでも違うって……五条先生がそう言うなら」
この感情に、一つも呪いが篭もってないって。
そう言うなら……。
「……五条先生が、全部壊して」