第27章 情③
「ならオマエは、何の理由もなく、無抵抗に宿儺に抱かれようとしてたのか?」
掴まれた手首が痛い。
沈み込む身体が、五条先生の呪いで満ちていく。
「宿儺に呪力を流して……宿儺がオマエの呪いも全部受け止めるから、もう僕はいらないか?」
「違――」
「じゃあどういうつもりなんだよ!」
畳みかけるように紡がれた怒りが、私の心を刺した。
「宿儺とのキスが、そんなに気持ちよかったか?」
違うよ、そうじゃない。
「僕のキスじゃ満足できなくなったか?」
そんなわけ、ない。
「宿儺とキスできて、僕にキスできない理由を……答えろよ!」
理由なんて……簡単だよ。
宿儺とキスしたのも。
五条先生にキスできないのも。
全部……。
「五条先生の……そばに、いたいから……ですよ」
五条先生のそばにいるために、宿儺と縛りを結んだ。
五条先生のそばにいるために、五条先生を呪わない方法を探した。
これ以上いい方法なんて、バカな私には見つけられなかったんだよ。
五条先生を裏切った理由も。
五条先生を傷つけた理由も全部。
私が、五条先生のそばにいるためだなんて。
そんなこと言ったら。
そうやって、悲しい顔するって、分かってたんだよ。
「私は……これ以上、五条先生を……呪いたくないです」
五条先生を、ただ、好きでいたいだけなんだよ。
「五条先生とのキスが……嫌なわけ、ないですよ」
忘れられないくらい、大好きだよ。
ずっと、傑さんのキスだけが好きだったのに。
それも忘れさせるくらい、そのキスを大好きにさせたのは……五条先生じゃん。