第27章 情③
引き摺られるようにしてやってきたのは、五条先生の寝室。
私のことを投げ捨てるようにベッドの上に横たえて、五条先生がその上に跨った。
目隠しが、乱雑にベッドの下に捨てられて。
「……逃げんな」
身体を動かした私に、五条先生が冷たく言い放つ。
一切身動きが取れないように、五条先生の両手が私の両腕を広げるようにベッドに縫い付けて。
冷たい眼が、私を見下ろした。
「……何か、言い訳があるか?」
最後のチャンスを与えるみたいに。
五条先生が問いかけてくれる。
でもその声音に、優しさはなくて。
言い訳を口にしたところで、私のことを許す気がないことくらい、嫌でも分かった。
「……僕に嘘吐いてまで、隠した結果がコレか?」
できることなら、隠し通したかったよ。
でも……それができないことも、分かってた。
「皆実……あの時言ったよな?」
五条先生の声が、震えてる。
「生き返ったオマエが、バカみたいに宿儺の呪力を漂わせてたのは、悠仁と同化したからだって。……それが理由だって」
言ったよ。
間違いなく、私がそう言った。
でもそれは、嘘じゃないんだよ。
「だったら……今、オマエが宿儺の呪力でいっぱいになってる理由を説明しろよ」
嘘は、吐いてない。
ただそれが、真実じゃなかっただけ。
私が宿儺の呪力を纏ってる理由なんて、五条先生の目に映った事実がすべてだよ。
答えなんて、1つしかない。
嘘の方が、よっぽど幸せなんだよ。
「いい加減、本当のことを言え」
もう何度目だろう。
何度、私は五条先生に嘘の答えを考えるんだろう。
「宿儺とどういう縛りを交わした」
答えない私に、五条先生が唇を噛んで。
「答えろ、皆実!」
綺麗な唇に滲む血が、私の罪悪感を彩った。
でもどんなに罪を償っても、私はこの罪から逃れることができない。
「何も……」
答えは変わらない。
この嘘を、私は何度でも繰り返す。
「……何も、縛ってません」
真実よりも、綺麗な嘘を……私は何度でも、口にする。
でもこの偽りを、やっぱり五条先生は、受け取ってくれない。