第25章 情
寝言みたいに、虎杖くんが呟く。
たぶんもう、自分が何言ってるのかは、ほとんど分かってないんだと思う。
「顔がカワイイこと以上にさ……俺は皆実の性格が、好きだよ」
静かに、虎杖くんの声が、私を励ます言葉をくれる。
虎杖くんは、呪われた私じゃなくて、ちゃんと私自身を見てくれて。
それが嬉しいのに、こんなにも虚しい。
「優しくて……でもたまに意地悪で……頑張り屋な、皆実のことが……」
私の感情を揺らす言葉が消えていく。
代わりに、虎杖くんの安らかな寝息が聞こえてきた。
虎杖くんが眠りにつくのと同時に、虎杖くんが手にしていた黒クマも活動を停止して。
眠ることも起きることもせず、活動自体をやめた、ただの黒いクマのぬいぐるみに変わる。
(……虎杖くん)
少し視線を彷徨わせると、ソファーの下にブランケットが落ちているのが目に入って。
私は黒クマと白クマを仲良くテーブルの上に置く。
落ちていたブランケットを拾い上げて、虎杖くんの体にかけた。
(私は道場で、訓練続けようかな)
幸せそうに眠る虎杖くんを起こしたくなくて。
虎杖くんから離れようとした。けれど……。
(……っ!?)
そんな私の腕を、虎杖くんが掴んで、そのまま引き寄せる。
(ち、がう……この模様は)
虎杖くんの体に浮かび上がる模様。
それは、間違いなくその男の顕現を、知らせていて。
《待ち侘びていたぞ……皆実》
私の背中を冷や汗が伝った。