第25章 情
「あー……それにしても、映画選びミスったなぁ。これ眠くない?」
「虎杖くんとのおしゃべりのが楽しくて、あんまり見てないから分かんない」
私が困り顔で笑うと、虎杖くんは少し照れたように頬を染めて、唇を尖らせた。
「皆実は、そういうとこあるよな」
咎めるように言われて、私は困惑した。
「……どういう?」
「んー、男に期待を持たせるとこ」
「……そう?」
「うん。知らんヤツの時は逆にサッパリしすぎなくらいサッパリしてるけど。俺とか伏黒に対しては、その分めちゃくちゃ優しいじゃん?」
そりゃあ、2人は友達だし。
友達に対して優しくするのは当然だと思うけど。
「だって、2人は特別だから」
「それ、そういうとこ」
私の言い訳を、虎杖くんは見事に指摘した。
「皆実にとっての『特別』なんだって思っちゃうとさ。皆実が俺のこと好きなんじゃねぇかなーって……期待する」
「虎杖くんは、そんなこと考えないでしょ」
「いや考えるよ、普通に」
即答されて、私は少し身構えてしまう。
虎杖くんから向けられた感情に、怯えた私に虎杖くんは苦笑した。
「うん。むしろそういう顔してくれた方が、勘違いはしないで済む」
虎杖くんは苦笑して、目を細めた。
「……でもさ、別にやましい意味とかじゃなくて、マジで純粋にさ……皆実に好きになってもらえたら嬉しいよ、俺」
虎杖くんの言葉には、本当に悪意も他意もなくて。
触れた虎杖くんの手から流れてくる負の感情は、少しも痛くなかった。
「皆実は……前に自分のこと好きな人はいなかったーって……言ってたけど」
虎杖くんの言葉が、どんどん途切れていく。
顔を上げたら、眠たそうな虎杖くんの顔が映り込んだ。
「俺は好きだよ。……皆実のこと」