第25章 情
私達が会話を続けてる間も、映画はずっと流れて。
どんどん話が展開していく。
その展開に合わせるように、私と虎杖くんの会話も移り変わって。
「皆実」
虎杖くんが映画を見ながら、私の名を呼んだ。
「……ありがとな」
いきなりどうしたんだろう。
ていうか、何の感謝だろう、って。
いろんな疑問を頭に浮かべる私に、虎杖くんは言葉を重ねる。
「ふと、さ。今こうやって、皆実と映画観てんのも……皆実のおかげなんだなって」
虎杖くんの感謝は、今ここで生きている事実に対してだった。
「私は何もしてないよ」
宿儺と縛りを結んで、2人で生き返ったけど。
縛りを結んだのは虎杖くんも同じ。
私たちは自分が生き返るために、それぞれが宿儺と縛りを結んだんだ。
だから私は、虎杖くんを助けたりしていない。
それでも、虎杖くんは首を横に振って、私の言葉を否定した。
「あのとき、皆実が『そばにいる』って言ってくれたの、マジで嬉しかったんだよ」
それは死ぬ直前の話。
虎杖くんの魂を呼び戻すために、私が虎杖くんと同化した時のこと。
「結果として、虎杖くんを死なせちゃったけどね」
「でも皆実も一緒に死んでくれた」
そう。私は虎杖くんと一緒に死んで、一緒に生き返った。
私と虎杖くんは、あの瞬間、全ての運命を共にしてた。
「そんで今も、俺のそばにいてくれてる」
それが嬉しいんだよ、って。
虎杖くんは無邪気に笑った。
「だから俺は……これから先、皆実のためなら何だってするよ」
クマに触れていない虎杖くんの手が、私の手に重なる。
「何があっても皆実の味方になる。俺が皆実を守るよ」
誓いの言葉を自信満々に口にして。
けれどもすぐに虎杖くんはポリポリと頬をかいた。
「って言っても、皆実には五条先生がついてるから……俺が守る出番なんてないんだろうけど」
虎杖くんは、私の欲しい言葉をくれる。
でも私が欲しいのは虎杖くんからの言葉じゃなくて。
こんな醜い感情しか抱けない私の心に気づかずに、虎杖くんは大きなあくびをした。