第25章 情
「……もうすぐ、一ヵ月だね」
映画が始まる中、私は虎杖くんに話かける。
映画に集中しろよって怒られるかなって思ったけど。
虎杖くんは「そうだなー」って私の話に乗ってくれた。
「早いもんだよな。まだ全然五条先生に勝てないんだけど。勝つ気配もねぇし」
コーラをグビグビ飲みながら、虎杖くんは棚から黒クマを引っ張り出す。
虎杖くんに引っ張られて、活動を始めた黒クマは、虎杖くんの呪力の流れによって、また眠りにつく。
「完璧になっちゃったね、それ」
「まぁな。でも皆実だって、かなり長く歌わせられるようになったじゃん」
2人してクマを抱きかかえて、会話を続ける。
映画の内容はあんまり頭に入ってこなかった。
「だいぶ、呪いを身体に集めなくなったんじゃねぇの?」
「うーん……そう、だね」
私の記憶にある限り、生き返ってから一度も、私は五条先生に呪いを流してない。
だから普通に考えれば、流さなくても大丈夫なくらい、呪いが体内に流れ込むのを防いでるってことなんだけど。
(毎朝、身体が軽くなってるんだよね)
その理由は、聞けずにいるけど。
たぶん五条先生が、寝てる間に私の呪力を抜いてるんじゃないかなって。
「つーか、呪いがたまったらいつもどうしてんの?」
「え?」
虎杖くんが不思議そうに聞いてくる。
そういえば、このことを五条先生以外で知ってるのは伏黒くんだけだったと気づいて。
言葉選びに、悩んだ。
「血を抜いたりして、流してる」
「え、毎回? すげぇ痛いじゃん、それっ!」
虎杖くんが顔を真っ青にした。
注射と一緒だから、言うほど痛くはないんだけど。
そう告げたら「注射も普通に痛ぇじゃん」って怒られた。
「俺にできることあったら言えな?」
虎杖くんが心配そうに言ってくる。
でもその厚意だけは受け取ることができなくて、私は苦笑した。