第25章 情
頑張る以外、私にできることはない。
呪力の制御を頑張るっていうノルマを与えられてるからこそ、今の私が保ててる。
何かを考えてる暇があったら呪力を制御しようって。
そしたらきっと、五条先生が私を必要としてくれる……って。
『……頭冷やせ、バカ』
私の胸で白クマが眠りにつく。
心が乱れるのと同時、綺麗に奏でられていた音楽が止んだ。
「悠仁、ちょっと待ってて」
白クマが歌わなくなったことに気づいて、五条先生が私に歩み寄る。
また、足手まといに、なってる。
「皆実」
「……大丈夫です。自分で、クマに呪力流して歌わせます」
流し方なんか分からないけど、きっとそれもやってみればできるはず。
自分で流して自分で吸って。
そしたら、誰の手も煩わせずに、強くなれるはずだから。
白クマをギュッと抱きしめた私に、五条先生のため息が聞こえた。
「貸して。皆実の呪力じゃ、強すぎて壊れるよ」
そう告げて、五条先生が私から白クマを奪う。
「訓練だし、少しは無理しろって言うけどさ。でも……」
白クマを起こして、また綺麗な音を奏でさせる。
美しく鳴くクマを、五条先生が私にまた預けて。
「無茶しろとは、言ってない」
サングラス越しに、五条先生の瞳が私を責めた。
悲しい音が、道場に響き渡る。
役に立ちたいだけなのに。
私の行動は五条先生の足枷にしかならなくて。
「……ごめん、なさい」
私と五条先生の気持ちは、完全にすれ違ってた。