第25章 情
※皆実視点
あれから数日。
虎杖くんは着実に五条先生から与えられる課題をこなして。
「くっそー! もう1本!」
今は道場で、五条先生と近接戦闘訓練をしてる。
「うん、いいよー。かかっておいでー」
(でもこれがたぶん最難関)
虎杖くんが何回挑んでも、毎回投げ倒されるのは虎杖くんのほう。
五条先生が術式使ってるなら当然だけど、訓練中の五条先生は術式を解いてる。
触れることができてるのに、虎杖くんは五条先生に一度もダメージを与えられていない。
また、虎杖くんが畳に投げつけられる音が響いた。
「んー、惜しかったねぇ。僕じゃなかったら、普通にフェイクに引っかかったかも」
虎杖くんの頭をポンポンと叩きながら、五条先生は笑ってる。
「めちゃくちゃ悔しい! あーーっ、もう!」
五条先生から一本も取れずにイラついた虎杖くんが、私の方を指さした。
私というよりは、おそらく私が抱きかかえてる白クマのほう。
「先生、せめて皆実のクマのBGMをロ●キーとかに変えてくれ! クラシックはやる気が削がれる!」
虎杖くんが五条先生にそんな要請をした。
私の胸で、白クマは軽やかにクラシックを奏でてる。
「今ちょうど2時間くらい?」
五条先生が私のほうを見て尋ねてくる。
五条先生が白クマに呪力を与えてから、おそらくそれくらいは経った。
つまり2時間、私は白クマの呪いを吸ってない。
しかもここは道場だから、他の呪いも流れてくるはず。
身体が痛まないってことは、おそらく他の呪いの侵入も制御できている。
「はい。それくらいです」
「だいぶ長時間できるようになったね。まだ1日には程遠いけど」
今のところ、最長で5時間は呪力の吸収を制御できてる。
24時間には程遠いけど、呪霊と遭遇して5時間制御できれば悪くないと五条先生が言ってくれた。
「その調子で、頑張ってね。で、悠仁はBGMを言い訳にしない!」
私のことを褒めてすぐ、五条先生は虎杖くんに視線を移す。