第25章 情
(そういえば、皆実の『大好きな人』が誰なのか、聞きそびれたままだった)
どうせ、五条のことなんだろうけど。
もし伏黒だったら、それはそれで面白かっただろうなって。
もう聞けない返事を想像した。
そんな私に、真希さんが声をかける。
「オラ、さっさと硝子サンとこ行くぞ」
その姿はやっぱり凛としてて。
やっぱり東京出てきて良かったって、真希さんを見てたらそう思える。
「私は真希さん尊敬してますよっ」
ついでに、皆実も。
笑った私を、真希さんは「あっそ」って、どうでも良さそうにあしらう。
そうして、硝子さんのところに向かう途中で、ボロボロになった伏黒と遭遇した。
私より血だらけかつ重症じゃん。
「負けてんじゃねーよ、伏黒」
「……オマエもな」
負けたわけじゃないって言いたいけど、堂々とは言えなくて。
私たちはまだまだ弱いんだって、実感した。
(虎杖と皆実、二人共ちゃんと、上から高みの見物しとけ!)
私たちは絶対強くなる。
強くなって、アンタ達を、びっくりさせてやるから。
「交流戦は絶対勝ーーーつ!」
「耳元で叫ぶな、うるさい」
「何よ、堂々と好きな女も言えないムッツリのくせに!」
「うるさいって言ってんだよ!」
「どっちもうるせぇよ」
文句を言い合う私達を、真希さんが呆れた声で止めた。