第25章 情
「……っ」
「ゴム弾で良かったわね? でも衝撃は来るでしょ?」
楽しそうに言って、何発も撃ち込んでくる。
たとえゴム弾でもこの近距離で、その出力で撃たれれば痛いんだよ!
(クッソ)
なんで呪具持って来なかったんだ、私のアホ。
買ったばかりのジャージに穴開けてんじゃねぇよ!
文句を言いたいのに、体中に撃ち込まれた弾丸に体がもたなくて、その場に倒れた。
「呪術師続けるなら、喧嘩売る相手は選ぶことね」
勝ち誇った声が降ってくる。
(まだ負けてないし)
でも今起き上がっても、また撃ち込まれて同じこと。
寝たふりをして、この女に尻餅つかせる方法を考える。
そしたら、聞き馴染んだ声が飛んできた。
「ウチのパシリに何してんだよ、真依」
(真希さん!)
救世主の到来に、私の勝機が見える。
「あら、おちこぼれ過ぎて気づかなかったわ、真希」
良かった。
やっぱり、真希さんとは仲悪いっぽい。
これで手加減は必要なくなった!
「おちこぼれはお互い様だろ。オマエだって物に呪力を篭めるばっかりで、術式もクソもねぇじゃねぇか」
「呪力がないよりましよ」
その言葉に、思考が止まった。
呪力が……ない?
あんなに、強いのに?
でも真希さんは否定しなくて。
続く侮辱の言葉も全部、綺麗に受け流した。
「あーやめやめ。底辺同士でみっともねぇ。野薔薇! 立てるか!?」
そう、声をかけられて。
立てないなんて、言えるわけがない。
「無理よ、しばらく起きないわ。それなりに痛めつけたもの」
舐めんじゃねぇよ。
真希さんが私に加勢するように、妹の注意を引いてくれる。
妹は、真希さんが向けた棒に気を取られてる。その隙に、私はそっと起き上がって、その背後に回った。
「何? やる気?」
(ああ、やる気だよ!)