第25章 情
「あーあ、伏黒君かわいそっ」
嫌味な声が耳元で響く。
「二級呪術師として入学した天才も、一級の東堂先輩相手じゃただの一年生だもん。後で慰めてあげよーっと」
媚びるような声が、さらに私をイラつかせる。
コイツ、さっきの伏黒の言葉をちゃんと聞いてなかったのか?
アイツの顔、ちゃんと見てなかったのか?
伏黒は、テメェなんかに慰められるような男じゃないんだよ。
「似てるって思ったけど、全然だわ」
真希さんの妹? 冗談じゃない。
「真希さんの方が百倍美人。そして皆実はその百万倍美人だったよ」
間近で見たら、余計にそう思う。
『野薔薇ちゃん』
別にめちゃくちゃイイ子ってわけじゃなかった。でも沙織ちゃんよりも可愛いなんて思うのは、後にも先にもきっと、皆実だけ。
「寝不足か? 毛穴開いてんぞ」
心の底から出た侮辱の言葉に、嫌味な顔が歪む。
「口の聞き方、教えてあげる」
銃を突きつけられて、私のお腹でパァンと激しい音が鳴った。